寄ってらっしゃい観てらっしゃい!
取り出したるは大阪生まれの人情喜劇、『月夜釜合戦』!
さぁさぁさぁさぁ御用、御用、遠き者は音に聞け、近き者は鼻で嗅げ。寄ってらっしゃい観てらっしゃい!ただただ難儀なこのご時世に、観ては益ナシ損もナシ! ふらりと立ち寄るもまた一興! 手前取り出したるは大阪生まれの人情喜劇、『月夜釜合戦』!『Kamagasaki-War of the Great Caldrons』!
舞台はアベノハルカス、坂を下りて、行きつく先は釜ヶ崎。
飛田遊郭しきる、釜足組の大事な大事な代紋彫られたお釜の盃、流浪の芸人逸見にこっそり盗まれた。チンピラたちは大わらわ! 数撃ちゃ当たると手当たり次第、あっちでワラワラ探し歩き、こっちでボンボン買い漁る。それを観ていた、源次郎! 町一番の情報屋。釜が売れるー! 日雇いたちは仕事ほっぽり釜ドロボー。儲け話や!としたり顔は大釜狙い泥棒大洞、相棒カズ。一攫千金、大根一本わらしべ長者。傍で見ていた私娼メイと孤児貫太郎はあきれ顔。
帰ってきた二代目タマオ、昔の因縁キンタマ疼く。炊き出しの大釜守る活動家ゴンスケ、大洞かついで革命か? ダークホースは、まっちゃんやまちゃん。昨日のガラクタ、今日はお宝、釜ヶ崎は大沸騰! これって資本主義? そうやで! ヤクザ、泥棒、私娼、尻目に、釜を狙う後ろの正面だーれ?
さぁさぁそれでは御開帳!
開発迫る釜ヶ崎で釜を巡るカマの掛け合い、
はじまり~。はじまり~。
偉大な釜を巡る争奪戦が始まる
「月夜の晩に釜を抜かれる」という諺(ひどく油断することの意。月夜の晩は明るいからといって、盗まれる心配はないだろうと思っていたら、大事な釜を盗まれてしまうことから)にあるように「釜」とは古来から最も大切な家財道具の一つとして扱われてきた。確かに米があっても釜がなければ飯が食えない。
また日本にはもう一つ親しみを込めて「釜」と呼ばれる場所がある-大阪・釜ヶ崎である。日本最大の寄せ場として多くの労働者が働き、その日々の稼ぎによって皆が飯を食ってきたことを考えれば、釜ヶ崎もまた巨大な「釜」として機能してきたと言える。今この巨大な「釜」はその機能を奪われようとしている。「安心・安全」を名目とした再開発により、街には監視カメラや野宿者の排除を目的としたオブジェやアートが配置され、じんわりと再開発がなされていく中で、そこにいる労働者たちも場を失いつつある。そのような状況に対抗する喜劇として「月夜釜合戦」は誕生したのである。
映画と社会変革をテーマとする監督佐藤は、前作「長居青春酔夢歌」の撮影現場で出会った友人たちと本作でも共同した。また川瀬陽太、渋川清彦、西山真来といった実力派俳優陣が参戦し、「釜」をめぐる争いの火に油を注ぐ。さらに本作は、今ではほとんど使われなくなった16ミリフィルムで製作されことにより、観る者に釜ヶ崎のにおいを喚起し、人々の息遣いや鼓動を感じさせずにはおかない。
世界で最も偉大な「釜」をめぐる争奪戦の火ぶたが、今切って落とされる!